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名古屋地方裁判所 平成6年(わ)1556号 判決

本籍

名古屋市中川区西中島二丁目六一五番地

住居

同 中川区中島新町一丁目七〇三番地

会社役員

安藤弘展

昭和二二年二月一日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年及び罰金二〇〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

当裁判所の認定した罪となるべき事実は起訴状記載の公訴事実と、「所得税の確定申告に際し」と「所得金額に関する」の間に「予てより取引に関する帳簿類を作成しておらず、取引によって得た利益を本名又は仮名で預貯金し、あるいは自宅購入資金に充当するなどしていたこともあって、」と付加するほかは、同一であるからこれを引用する。

(証拠の標目)

一  被告人の当公判廷における供述

以上のほかは検察官請求証拠等関係カード甲番号1ないし6、8ないし19及び同乙番号1、2、4、5記載の各証拠と同一であるから、立証すべき公訴事実の別の記載ともども、これらを引用する。

(法令の適用)

罰条 いずれも所得税法二三八条一項(懲役刑と罰金刑で処断)

併合加重 刑法四五条前段、懲役刑につき、同法四七条本文、一〇条(平成三年分の脱税罪の刑に)、罰金刑につき、所得税法二三八条二項、刑法四八条二項

労役場留置 同法一八条

執行猶予 懲役刑につき、刑法二五条一項

(量刑の理由)

三年間にわたる脱税額、脱税率にかんがみると刑事責任は軽視できないので、懲役刑に罰金刑を併科することとする。しかし、本件査察を契機に脱税を繰り返さないことを決意し、個人営業を有限会社に組織変更するとともに、今後は商業帳簿の記載を正確にし、顧問税理士に税務を依頼することにより、税の申告を適正にする旨誓っていること、交通事故と交通違反のかどによる罰金前科二個のほかは、前科がないこと、修正申告にかかわる本税、重加算税、延滞税等を完納したことなどを考慮して、罰金額等を量定するとともに、懲役刑の執行を猶予することとした。

よって、主文のとおり判決する。

(検察官宇川春彦、弁護人花井増實公判出席))

(裁判官 油田弘佑)

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